6.調弦(チューニング)

     弦を使った楽器はいずれも同じであるが、ピアノみたいに
    調律士が調律(弦)するのではないので、調弦は演奏前の
    重要な作業であり、正確に行う必要がある。調弦が正確に
    されていない楽器では、良い演奏は出来ない。
     ギターを抱えている時間と共に体温の影響により、そして
    周囲の温度変化により、音の高さは微妙に変化する。これ
    は、弦の材質のナイロンが熱の影響を受け変化するからで
    ある。
     特に、ステージで演奏する場合は、スポットライトの熱で
    変化することに注意して欲しい。直接スポットライトを浴びな
    くても、ステージの内外では温度の差が激しく、せっかくステ
    ージ入場前に調弦したのに、特に1弦、2弦、3弦が大きく狂
    ってしまうのは当り前のことであり、時間が許す限り、ステー
    ジに着いてから再確認し、狂っていたら、微調整をした方が
    良い。また、そのくらいの余裕が欲しい。音の狂ったギターの
    演奏は聞くに堪えないほど、情けないものになってしまう。
     温度が上がると音は高くなるし、温度が下がると音は低く
    なる。1弦、2弦、3弦は4弦、5弦、6弦に比べ変化が著しく、
    全弦が一様に変化するならまだ良いが、弦の構造と太さの
    関係から、各弦の音の変化はバラバラである。また、この変
    化は新しい弦ほど(張り替え後の経過時間が短いほど)激し
    く、張り替え後、速く安定するもの、ゆっくりなもの、弦のメー
    カーや種類によっても差がある。
     人前での演奏を控えた場合などは、数日前に交換するか、
    強制的に弦を少し伸ばしてやり安定させた状態で臨むことが
    必要である。他の楽器との調和が必要な合奏(アンサンブ
    ル)の場合も、特に重要になる。
     自分の楽器の癖をつかみ、その場の状況を判断して、こま
    めに、自分の楽器の状態を確認する習慣をつけて、いつも
    ベストの状態を保つようにして欲しい。曲が一区切りしたとこ
    ろで微調整することが必要な場合もある。
     以上の理由から、初心者にとって調弦の仕方は非常に重
    要な勉強の一つである。

     調弦には、次のような方法がある。
    
@音叉で合わせる
      音叉(A=440Hz)の先端を叩いて振動させ、根元をギタ
     ーの本体に当てて音を出す。その時の音が440hzの音の
     高さである。これは、ギターでは1弦の5フレットの音の高さ
     である。音の確認の仕方は、他に、先端を耳の後ろに当て
     るか、先端を口(歯)でくわえる方法があるが、本体に当て
     る方が調弦はやり易い。ピアノを使っても良いが、ピアノが
     ない場所では調弦が出来ないことになるので、まず基本的
     な音叉を使う方法を紹介する。
      まず最初に、5弦の開放弦を音叉の実音より2オクターブ
     下のA(ラ)に合わせる。

    
@-1<5弦をAに調弦する方法(その1)>
      5弦の開放弦(フレットはどこも押さえない)を弾いて音を
     出し、先端を叩いて振動させた音叉を右手でギター本体に
     当てて鳴る音との違いを確認しながら、左手で弦巻きを回
     して、2オクターブ低いA(ラ)になるように合わせる。どうや
     って合わせるかであるが、両方の音を聞いて、うなり音の
     状態を確認する。音の高さが合っていないと、鳴らした時
     にうなり音が発生する。音の狂いが大きい程うなりの周期
     が短く、音の高さが合ってくると周期が長くなる。うなり音が
     気にならないレベルになるまで調弦を繰り返す。
     (うなり音):2つの音の波長が一致しないと、お互いの音
             が打ち消されたり、合成されたりして音の大き
             に強弱の波が出来、『ウォ―ン・ウォ―ン・・・』
             という「うなり」として現れる。

    
@-2<5弦をAに調弦する方法(その2)>
      先端を叩いて振動させた音叉を右手で5弦の12フレット
     上に当て(押さえずに触れさせるだけ)て音を聞きながら左
     手で弦巻きを回していき、一番音が大きい時が、5弦がA
     に合った状態である。

    
@-3<他の弦の調弦(一般的な方法)>
      調弦された5弦を基準にして、他の弦を順番に合わせて
     いく。調弦する側の弦を鳴らし基準の弦と同じ音の高さに
     なるよう@-1で示したうなり音の確認方法で調弦する。
      6弦の5フレット(以下「F」で表現する)と5弦(開放弦)、
      5弦の5Fと4弦(開放弦)、4弦の5Fと3弦(開放弦)、
      3弦の4Fと2弦(開放弦)、2弦の5Fと1弦(開放弦)の
      それぞれについて音の高さを合わせる。
     文章に書くと、非常に難しいようにみえるが、慣れてしま
     えば簡単に出来るものなので、自分で正しく調弦出来るよ
     うに努力して習得していただきたい。

    
@-4<他の弦の調弦(ハーモニックス音を使う方法)>
      6弦5Fのハーモニックス(以下「har」で表現する)と5弦
     7Fのhar、5弦5Fのharと4弦7Fのhar、4弦5Fのharと
     3弦7Fのhar、6弦7Fのharと2弦(開放弦)、5弦7Fの
     harと1弦(開放弦)のそれぞれを順番にハーモニックス
     音を使って音の高さを合わせる。
      方法1、2のいずれも最初に合わせた基準の5弦はさわ
     らないようにする。調弦後も音の高さは変化するので、
     調弦がすんでも繰り返して確認し、変化があれば微調整
     する。(@-4)の方が、音を出してから左手を弦から離し、
     うなり音を聞きながら調弦するので、より正確に出来る。

    
Aチューナーで合わせる
      チューナーを使えば、全ての弦について簡単に調弦が出
     来るので、初心者はチューナーを使った方が正確に合わ
     せることが出来ると思う。マイクを使ったピックアップ装置を
     使えば、初心者でなくても騒々しい場所での調弦には便利
     である。しかし、厳密に正確さを再確認するためには、チュ
     ーナーで調弦後、耳で確かめることが必要になって来る。     

    
Bその他の方法(調子笛)
      6本(E、A、D、G、B、E音)の笛がついており、笛を吹いて
     その音を聞きながら、各弦の音の高さを合わせていく。この
     方法では正確な調弦は難しいと思う。

     ※いずれにしても、自分の耳で確かめるやり方が必要に
      なるので、何度もくりかえし実践し、比較する音との違い
      を判断出来る能力を養って欲しい。努力すれば、誰でも
      出来るようになる。